水平から斜線へ、生真面目から自由へ
車のヘッドランプの形は人の目と同じで、車の表情は目(ヘッドランプ)の形で決まる。ヘッドランプの形を「共感言語」に通してみると、10代目「カローラ」のモデルチェンジは高級感と自由さを目指していることがわかる。
9代目と10代目のランプを比べると、10代目は目じりがくびれるように上がる微妙なカーブになって、斜め方向が強調されている。斜めの方向は活発な自由さをイメージさせる。10代目「カローラ」が生真面目さから若者らしい自由さにシフトしているのだ。

シンプルから複雑へ、安価から高級へ
目じりにくぼみが加わると、ヘッドランプの形は少しだけ複雑な形になった。一直線のシンプルさから、曲線による複雑さに変わった。つまり、堅実、実用的なイメージから、高級で上品なイメージに変わったのだ。また、くぼみによって曲線が強調され、男性的イメージから女性的イメージに少しだけシフトしている。見落としそうな小さなくぼみだが、水平から斜線へ、単純から複雑へ、直線から曲線に、ほんの少しだけシフトしている。
この少しの変身によって、10代目「カローラ」の印象は若々しくなり、かつ上品な高級感も加わった、ユーザーの望むイメージが出現し、「共感力」も高まったわけだ。
ヘッドランプの大きさは変えない
人の第一印象が顔から決まるように、車の印象はヘッドランプの形がかなり重要だ。
「カローラ」のヘッドランプの大きさはセダンの標準的な大きさで、この大きさはトヨタ車らしい堅実さと誠実さを表す。この大きさは10代目になっても変わらず中庸さを保っている。この堅実感は「カローラ」の保守的なコアユーザーには譲れないところだ。
アメリカ型は反アメリカン
ヘッドランプの形で世界中の「カローラ」を見てみるとアメリカ型とヨーロッパ型に大別される。ヨーロッパ型はシンプルで開放的、アメリカ型はまるで高級車のようだ。
アメリカ型の風格は複雑さと水平性によって表されている。ヘッドランプの形は複雑な曲線の組み合わせでつくられている。ランプの高さは抑えられ、水平方向を強調している。
ヨーロッパ型のヘッドランプの形は、単純な線でつくられ、高さもある。この結果、アメリカ型は小型車とは思えないくらいの威風堂々とした風格を表し、ヨーロッパ型は、気軽に使えるカジュアルなコンパクトさを表している。
日本人は、アメリカのイメージを気軽さや開放感を表す「アメリカン」という言葉で受け止めているが、アメリカ人の色や形の好みを聞くと、むしろ正反対のイメージが浮かび上がる。意外な印象にも思えるが、現在のアメリカ大統領選の服装や演説会場などの様子を見ると威風堂々が好みのようだ。

中国市場もアメリカ型
中国で販売している「カローラ」もアメリカ型だ。これは中国人の気質を反映したスタイルだ。アメリカ型に近く、日本人やヨーロッパ人の好みと距離を置いている。
現在の中国人の気質を、別な調査で色や形の「共感言語」で調べてみると、
@威風堂々と力強くはっきりしている
A格調高さを好み、カジュアルさを嫌う
B歓迎感の強い、鮮やかな配色を好み、都会的なクールな配色を嫌う
ことがわかった。こうした共感言語を通した調査結果を見ると、日本人好みの評判の良いデザインが、現地で受け入れられるとは限らないことがわかる。
色と形を具体的な姿でとらえる
トヨタはデザインの拠点を愛知県豊田市の本社だけに集中させず、東京、アメリカ、ヨーロッパにも広げている。中でも、南仏の拠点は、ヨーロッパの現地のトレンドチェックに力点が置かれている。ディーラーの意見から当地の好みを知るだけでなく、デザイン情報を積極的に収集している。この情報収集で注目することは、カラー嗜好やトレンドに集中していることだ。人の嗜好は言葉で表すと本音が隠れてしまい、時には求めている嗜好と反対の答えが出てしまう。言葉を利用した市場調査には危険がある。
これを避けるためには色や形、画像などのデザイン要素から読み取ることが必要になる。トヨタの方法は、まさに色と形を具体的な姿でとらえている。
ベストセラーへの道
世界で1番売れている車
07年のトヨタの販売台数は世界第1位のGMにほぼ並ぶものだった(両社の差は約3000台)。07年3月期の売上高は23兆9480億円(前年比11・4%増)、純利益は1兆6440億円であった。そのトヨタで1番売れている車が「カローラ」だ。
メインユーザー層の高齢化
「カローラ」には、おじさんの車、ダサイ、退屈な車といったイメージがある。初代カローラは、所得水準の高くない若いファミリー層でも無理なく持てることを狙いとし、それが見事に当たった。当時の購入者の平均年代は30代前後。それから40年、「カローラ」セダンのユーザー全体の80%が50代から60代になっている。
かつて、大衆車と言えば、「カローラ」などのコンパクトサイズのセダンが主流だった。現在は、運転がしやすく、家族での移動も楽で、維持費も経済的なミニバンや軽自動車がファミリーカーのイメージだ。女性、子育てママたちが運転する機会も増え、デザイン的にもオシャレでスタイリッシュなものが求められてもいる。
販売の足元が揺らぎ始めた「カローラ」にとって、イメージを変え、女性層や若い世代、将来のファンを獲得することが必要だ。堅実な実用車のイメージから、遊びやファッション性のあるイメージへの変化が必要なのだ。
ここに超ロングセラーのジレンマがある。
一気に若者向けにしすぎてしまうと、今までのユーザーが自分には若すぎると感じて離れてしまうので、少しずつ堅実に変えていく。一歩ではなく、半歩だけ先をいく。ユーザーの声を丁寧に拾い上げ、地味だが基本的な部分を改良していくのだ。
カローラは世界のベストセラーカー
「カローラ」は、トヨタを代表するコンパクト・セダンであるだけでなくギネスにも登録される世界一のベストセラーカーだ。
現在、140以上の国・地域で販売され、北米、中南米、中国、タイ、トルコ、イギリス、南アフリカなど世界16ヵ国・地域で生産されている。販売台数は、69年に年間トップになってから現在に至るまで、02年以外(この年の首位はホンダのフィット)は首位を独走している。
累計世界販売台数は3200万台以上にも達している。
世界中に展開する「カローラ」のスタイルは様々で、各国ごとに表情が違う。とても同じ車種には見えない。この各国の動向に合わせたアレンジぶりが「カローラ」が世界を走る続ける秘密の一つだ。
アメリカ系スタイル
アメリカ系は、小型車ながら威風堂々として風格車の表情を込めている。ヨーロッパ系が小型セダンをコンパクトで手軽な車ととらえているのとは反対だ。
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ヨーロッパ系スタイル
ヨーロッパ系は手軽さ、カジュアル感が強調されている。
世界中に展開するカローラは、各国ごとに表情が違い、同じ車種には見えない。
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