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共感力でヒットをねらえ
デザインを論理的に読み解く

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デザインが客観的な技術になり、予想外の力が見えてきた

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激流の自動車市場の中で、40年以上前に作られた車が今もベストセラーを走り続けている。アメリカ市場では、低燃費を求めるユーザーの思いがけない支持を受けている。それにしてもこの激流の中を40年以上もトップを守り続けた秘密はなんだったのか。

ベストセラーが続いてブランドになる
ブランド磨きの王道でほぼ40年連続の売り上げナンバーワン

トヨタ自動車「カローラ」

ブランド管理の鉄則はデザインを変えないことだ。しかし、40年も放置しておけば、すっかり色あせてレトロ商品になってしまう。この矛盾する問題を解決しているのがトヨタ流モデルチェンジだ。

06年モデルチェンジした「カローラ」10代目と、前モデルの9代目を比べると、ほとんど変化がない。しかし、初代「カローラ」と比べてみるとまったく別の車となっている。大きな時代の流れに沿って、見かけはほんの少ししか変えないトヨタ流がブランド磨きの王道だ。

ブランドを守るには変化しないこと
ブランド化した商品のデザインは決して変化させない。デザインを変化させると、商品を気に入ってブランドの信者となった生真面目な消費者に迷いと混乱が生まれる。そしてブランドから離れてしまう。ブランド化した商品の強みは少し保守的なコアなユーザーの存在だ。コアユーザーの存在を無視しては、ブランドを築き上げた努力が水泡になってしまう。

時代の風を無視するとマイナーに転落する
ベストセラーであり続けるには、時代の風と一体になって変化し続けることが絶対条件だ。時代の風を無視したスタイルには、保守的な一部のマイナーユーザーしか残らない。

ベストセラーを支える多数派のユーザーを取り込むためには、時代の風をつかんだ「共感力」を持つことが絶対だ。上図の40年前の初代「カローラ」を見ればそのことがはっきりと見える。現在では、よほどレトロ好みの物好きしか購入する気にならない。

ダルマさんが転んだ。少しずつ変身する
変身しないで変身する。矛盾するこの条件をクリアするのがトヨタ流のモデルチェンジだ。子供たちの遊ぶ「ダルマさんが転んだ」のように、少しずつほとんど気づかないくらいに変身していくのだ。

モデルチェンジ自体は鳴り物入りのテレビCMやニュースを通して華々しくアピールする。それによってユーザーは、操縦性や安全性、いろいろな設備が加わり大変化したように感じ、新しいモデルを買い替えたい衝動に駆られる。しかし、車全体のテイストは、ほんの何ミリかの気づかないほどの変化しかない。自分が以前から乗っていた愛車とさして変わらない。こうしてコアユーザーは心安らかに新車を楽しむことができる。微差の変化こそが、ブランドを維持する王道なのだ。

40年間を同じ流れで変身し続ける
下図のように初代「カローラ」と10代目を比べてみると、まったく別の車だ。一方、9代目と10代目を比べるとほとんど変わっていない。だが、両方の変化を比べると、その方向性はまったく同じだ。単なる変身ではなく、過去40年間にわたって同じ方向を目指して、少しずつ、確実に変化させてきたことがわかる。

結果的に、まったく驚かされる見事なハンドリングというべきだろう。この大きな風を読み取り、「共感力」を生み出していく力こそが「カローラ」開発者たちの隠された力だ。

車のシルエットから時代が見える
初代カローラは10代目とはまったく別の車のようだ。この変化は単なる一時的な流行ではなく、私たちのライフスタイルを反映した変化だ。時代の風、「共感力」のない商品はどんなに性能がすぐれていても生き残れない

10 代目←初代
まったく別な車種になったようにみえる。しかし、その変化の方向は9代目、10代目まで同じ方向なのだ

10 代目←9 代目
直線から曲線へ、無機から有機へ、後下がりから後上がりに。ほとんど差のないほどの変化だが、確実に少しずつ同じ方向に変身している

重層のトヨタデザイン組織
トヨタのデザイン決定までの組織は、デザイナー約350名とモデル制作など計約680名に支えられている。デザインの拠点は、愛知県豊田市の本社を中心に東京、アメリカ、フランスなどに広がり、世界のトップの自動車メーカーとしては、トヨタらしく、効率的でコンパクトな体制で支えられている(05年1月現在)。この中で注目されるのがスタジオ/プロダクトデザイン室の制度とデザイン評価委員会や評価パネラー制だ。

スタジオで独創性を求める
デザイン開発を組織的に進めると、デザインの品質は確実に高まるが、もっとも大切な時代の風への「共感力」が抑えられてしまう。

これに風穴を開けるのがスタジオだ。リーダーは、スタッフが自ら立候補してその個人名を冠したデザイン室が開かれる。そのスタッフは、室長が自由に指名するという制度だ。アイデアの創出が自由になり、時代の風にこたえ「共感力」を生み出しやすい体制ができる。

二重三重の評価体制
一方、風が自由になりすぎるのをガードするのがデザイン評価委員会だ。本社デザイン部長を議長とした評価組織ですべてのデザインを決定し役員会に提案される。

ユニークなのは従業員約200名が登録されている評価パネラー制だ。デザインの専門家による審査の前に、まずパネラーによる評価が行われる。デザイナーではない営業企画関係者や世代別のパネラー、女性のみのパネラーなどの視点からデザインをチェックする仕組みだ。